Eno.126 セツカの日記

春はきっとあなたの傍に

――船旅を終えて、私達は。

故郷の街へと妖精さん達と、友人をここまで連れてきて。
暖炉のあるわが家へとまずはご招待をして、妖精さん達とは一旦離れて。

――母と友達と、3人で食べるのはとても美味しくて。

祝福も忘れて街へ、と繰り出そうとした手前。

ドアから突然息が上がった冬至の使いが顔を出す。

「……っぶね~~~!!!
 おい!!!今祝福無しでその子を連れ出そうとしただろ!!!?


「ムッ。いきなり失礼な妖精さんね!!」


「失礼も何も友人を凍死させるかお前ぇ!!」


「……あ」




その様子に、シィリヤ……、シィセスはジト目でこちらを見てきて。
慌ててコホン、と咳払いして誤魔化しつつ。

「……君が来てくれるとは、思わなかったよヴィンテル」


「そりゃあ我らの春の女王のひよっこさんが同胞になりそうな子を連れてきた!
 って妖精共がうるせえからよ。
 そりゃあ大急ぎで来るってもんよ」


「……で?そいつ。
 俺らの国に来させるんだろ?
 ちゃんと体質の変化やら寿命の変化やら説明したか?」


「……まだ。街を案内したらそのまま連れてこうかなと。
 承諾してくれそうだし……」


ほう!!れん!!そう!!
 ちゃんとこういうのは説明しとけよな?
 何かあった時に後悔させて泣くのはお前なんだぞ?」


「……ん、分かった。
 相談、しとく」



そう、苦笑いしつつも頷けば。
よろしい、とため息を吐いた後に、シィセスの方へと向いて。

「そんじゃま、あれだけあんたの前で悪態晒したんだ。
 仕事ヅラは無しで行くぜ?同胞になるかもしれねぇ客人殿?
 今から歌を歌うから、よく耳を澄まして聞いてくれよな。
 ……あんたが、この先寒さに困らないように祝福をかけてやっから」



そう、シィセスの方へと頭を撫でれば。
『あのひよっこ女王様はどうしてっかね』
と何かを思い出すように呟いたのを聞き逃さなかった。


あとで聞こう。なんか面白そうだし。




そうして、この家に祝福の歌が響き渡れば、
やがて、また顔をだすよ、と冬至の使いは家を後にして。

私達は、少しお喋りを交わして。
街へと、飛び出すことにした。

――今は、冬が近づいてるから、寒波が厳しいけれど。

街の人々は、変わらずに妖精の祝福を受け、元気に過ごしてて。
物珍しさにきょろきょろとさせるシィセスにくすくすしたり、
共に屋台のご飯を食べたり。

色んな事を、いっぱい、いっぱい。

堪能しながら、歌を歌う。




――いつしか、冬は溶けて。

きっと、あなたにも、巡って春は来る。

そんな、歌を、あなたと奏でよう。


大丈夫。
きっと、もう春は、すぐ傍にあるから、ね?