無題
彼女は標の天使と言っていた。
曰く、古来から地を見守り、標を見守り、人を見守ってきたと。
環を持つ彼女は、私を外の世界に連れ出しに来たと言った。
「おまえは、外の世界に出るべきだ」と。

「――今はわたしは席を空けられないけど……
わたしの代わりに武者修行に送りたい子がいるんだよね」

「貴方の言う『闘技』に合う、とびきりの剣聖さんが」

「しょーがねーな。でも、おまえもいつか同じようになるぜ。
アタシが連れ出すか、運命がおまえを連れ去るかの差だからな」

「そん時はそん時かな。
こうみえても、わたしは強いからね」

「へっ、言うじゃん。
それで、そいつはなんて言って連れ出せばいいんだ?」

「そうだなあ――」
そんな会話もいつのことやら。
ただ、思い返せば……"あの波"は天使の言う運命だったのかも、だなんて。

「いい運命をありがとね、天使さん」
船を降りて、私はひとときの非日常の続きへ戻る。
座を継ぐその日まで、あと――