Eno.206 エンティティとフィン

拾ったガイドブックと 工作の時間

「このガイドブックはたいへん有用ですね」

浜辺に一緒に打ち上げられていた、一部のページだけ読める冊子を器用にめくる。
ぺらぺら。

「河川のような水源がないのは残念でしたが、道具を駆使すれば何とかなりそうです。
 浄水……ふむ、海水を蒸発させて……
 火花は何かしらの手段で起こす必要はありますが、これも作ってみましょうか」

「ティティ、はなびさん、する? はい!」

ずずい、とエンティティに何かを差し出した。

「いえ、花火ではなく火……って、ランタンではないですか。
 持って来ていたんですね、この不思議なランタン。素晴らしいです。
 では、お借りして……」


拾った落ち葉にランタンをかざす。
熱を感じない、透き通る炎が、落ち葉に燃え移ってしばらくすると、熱と光を発し始めた。


「ぱちぱち、ぽかぽか、です!
 おりょうりも、できます?」

「そうですね。石などの不燃物に乗せて、携帯コンロになるようです。
 浜辺で拾ったサメも、切り身にすれば料理できるでしょうが……捌くには他の道具が必要そうですね……
 まあ、それは後ほど考えましょう。下拵えの必要ない食材もあるかもしれません」


「さて、もう暫くこの辺りを散策してから、テントに戻りましょうね。
 私はともかく、君は屋根のある場所で休まないと、倒れてしまいますよ」
「はあい!」