Eno.705 小烏丸

同じ目的をもって、共に。

異世界の無人島に遭難したらしい。

そんな事有り得るのかと困惑したが、なってしまったもんは仕方がない。なんだこれ。
時間と感覚の許す限り歩き回ったが、共に迷ったらしい人達以外に気配はない。
生い茂る木々、打ち付ける波、広く青い空。生命力溢れる、此岸の島。だが、憩う余裕はない。

​───────七日。それまでに船を拾い、脱出する。それが出来なければ、命の保証はない。
その事実を抱え、動かなければならない。
れい元気な少女
あすたー落ち着いた知者
あせい騒がしい行動家
ゆりこ周りを気遣う女性
よく働く少年
……そして自分。

『可能な限り、協力して』

………協力。よく知った、言い馴染みも、聴き馴染みもない言葉だった。何せ生まれた時から己はただひとつだった。兄となるべき『彼』と違って。
だから、それは初めての問いだった。

『同じ目的をもって、共に。』

自分に、出来る事なのだろうか?