Eno.528 わしししょう

ここにいたるまでのわし

さっく さっく。
波打ちぎわに大きめのわしが歩いています。

近くの海の家で買った焼きイカを食べながら、
潮風をあび、気持ちよさそうにお散歩中です。

「イカを食べる時はよく噛むといいぞ」


ひとり言で師匠アドバイス。
それがわしの日課でした。弟子はいません。

「海では波にさらわれる危険があるのじゃ」


ふたたびのひとり言にこたえるように。
ざぱーん。突然の大きな波がわしを襲います。

「グェー」


わしはいっしゅんで海に引きずりこまれ、
がぼがぼともがいているうちに気をうしなって。

そうして、見知らぬ島まで流されてしまいました。