Eno.736 円寺院エルザ

日記1

ざざーん、ざざーん。
波の音が心地よいです。

目を開けると、抜けるような青空、白い雲、夏休みの匂い。
気が付くと私は、砂浜に仰向けで寝ていました。

ざざーん、ざざーん。
どうしてこんなところで寝ているのでしょう。
波の音が心地よくて、ついついうとうとしてしまいます。

たしか、白宝堂の皆さんと海に出かけたはず。
前の日は楽しみで、あまりよく眠れなかったほど。
寝不足のまま船に乗っているうちに船酔いを起こして、
ぼんやり遠くを眺めていたら、
沖に出たところで、大きな波がやってきて……

……寝ている場合では、ない!!

「状況を推測。状況判断、緊急度に従い行動順位を取捨選択。フゥイリー店長、マオ先輩、ルーランさんの現状を把握、及び救助を優先して行います」

身体のキレを確認。大丈夫。身体は十全に動きます。
眠気も船酔いも吹き飛ばす血流の巡りを、アドレナリンの奔流を体内に感じながら、
心臓が在る部位のあたりできゅっと拳を作ります。
不安の虫は握力なんかでは潰れてくれないけれど、
今は足が動いてくれれば十分。

「フゥイリー店長!マオ先輩!ルーランさん!!どこにいますか!!」