Eno.571 春日アセイ

記憶

……気が付いたら、私はどこかの無人島らしき場所に漂着していた。
ここ数時間の記憶がない。私は……あの作戦を実行するため、輸送機に乗って……

……そうか、敵対派閥の手によって輸送機に細工がなされていたのだな。
我々が戦うべきは鬼畜の者共であるというのに……国内で争っているようでは。
ともあれ、そういうことであれば、この島に仲間が他にも漂着していないかを確認せねばなるまい。
今頃、敵対派閥の連中はまんまとうまく行ったと大笑いしているに違いない。
碌に捜索もせず、我々は任務中に死亡したものと扱ってくるだろう。

だが、奴らの思惑もここに潰えたというわけだ。私がここに生きている!
なんという運の良さだ。これまでも運に恵まれてはきたが、今回も神は私に微笑んだ!
帰還の手段も考えねばな。それまでは、この島で生き延びる方法も……
ん?この筒は……手紙が入っているのか。なるほど……

満潮になると沈む島だと!?そんな馬鹿な。いや、その前に気になる事もある。
異世界……異世界だなどと。簡単に信じられるものかよ。
まあ……その点は置いておくとして……残された時間は少ないか。
神は今ここに、私に向け試練を課すつもりらしいな。であれば話は簡単だ。
島が沈む前に、この島より脱出し、敵対派閥の者らに泡を吹かせてやろう!
これを成せば、「天運恵まれども才在らず」などという風評も……吹いて飛ぼう!