Eno.44 永埜目 詠

新幹線で1時間半、電車で15分、徒歩15分

流島高校の通信制はほとんどのスクーリングが任意で、他県にいるまま卒業することも可能だった。
同じ学校からは他に目指す人はいないとも聞いて、そこへの受験を決めた。
保健室でただ問題集を解いただけの知識と、少しの面接で呆気なく高校受験は終了した。
1年生のうちは、授業に慣れることで精一杯だし、まだ外に出るのも怖くて、端末越しの教室だけを見ていた。
それでも2年生になるのだからと、勇気を奮い立たせ、スクーリングのためにわざわざ新幹線に乗ってまで向かったのだった。
これがうまくいけば、少しずつ通学を増やして、下宿でも借りて少しは普通の学生らしく通えたらいいななんて思っていた。


そのはずだった。



「……のに、なんで遭難してるの〜!?


全日の人たちばっかだよ〜〜〜〜!!
 話したことあるの植草くんとグレイテスト先輩しか居ないじゃん!!!!
 いや、居てくれて本当に良かったけど……


「いつの間にこんなことになっちゃったんだろう?
 えーと、新幹線に乗って、電車に乗って、人が多くて気分が悪くなって……それで……」


「うう、なんでここから無人島に来ちゃうんだ……。
 わけわかんないよ……」


「はあ、もう人見知りとかそんなことしてる暇ないし。
 木炭作ろ……」




ガシャコン、ガシャン。
炭をかき混ぜる音が続く……。