Eno.76 アルジェント

とある貴族の手記 5

◆ 島に流れ着いていたボロボロになった手記より抜粋 ◆

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悪魔からもらった金貨で食料を買い、
余った金貨も添えて領民たちに配り歩いた。
どこからそんな金がと配り終えた後父と母に詰められたが、
悪魔を喚んだと本を見せても怪訝な顔をするばかり。
しかし、買った本人である父ですら信じていなかったとは…。
あの人は本当に無駄遣いが好きらしい。馬鹿馬鹿しい。

領民たちは皆感謝してくれた。
ほんとうに、救世主にでもなったような気分だ。
父と母は己の欲を満たすばかりでこの光景を知らないのだろう。
人に感謝される。これほど気分がいいものはないというのに。

悪魔は礼を告げた際に消えてしまった。
本から悪魔を召喚する際に参考にしたページも消えている。
きっともう二度と喚ぶことは叶わないのだろう。
だが、これで助かったのだ。皆冬を超えて生きられる。

ああ、本当に善い行いをした。
悪魔がいるのならきっと神もいるのだろう。
そしてその神は…善い行いをした私を愛してくださるに違いない。

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