Eno.130 レフ・レテノール

Report.1

レフ・レテノールは研究所産まれ研究所育ちの箱入り半吸血鬼である。

「日光も銀も通用しない、血に飢えてもいない吸血鬼」をモデルとして作られ、耐久力・身体能力もそれなりに高いこと、また太陽の光を克服したことから優秀な個体として目を掛けられてきた。

今回もその一環で神話生物を信仰する敵対教団への斥候や偵察任務を課してくる場所待遇はそれなりに良いが危険な仕事先から春休みと言う名の長期休暇をもらい、旅行の計画を立てていた……はずだったのだが。

「いやキッツ!!!」">



絶賛遭難先で泥水を啜っていた。

目が覚めれば見知らぬ砂浜、食料探しに奔走していれば喉の渇きに耐え兼ね泥水を啜る羽目になって腹を壊す。最悪である。既に研究所じっかの鼻の奥に抜けるような消毒液の匂いが恋しい。

とりあえず、なんとしても春休みが終わる前に脱出せねば。
最早記憶の彼方に吹き飛んだ旅行計画を他所に、痛む腹部を押さえてレフは今日から資材を集めて回る。