Eno.181 潮彩のリューカ

星に願いを

リヴィラナと修行の旅に出て、それなりに時は過ぎた。
いろんな場所とは言っても、わたしが生まれた国の外に出るほどの距離じゃないけれど。
それでも数々の強者と出会って、わたしを挫折させるには十分だった。

地元の町では負け知らずのわたしとリヴィラナだったけれど、世界は思いの他遠かった。
冷たい涙雨の中で、リヴィラナが傘代わりにかざしてくれた翼が、ただ暖かかった。


――それから、しばらく。旅をやめようかとわたしが迷い始めた頃の、ある日の夜。
町から程遠い大自然の足元、ぱちぱちと弾ける焚き火をふたりで囲んでいた時。
リヴィラナは急に口を開いて言った。

「知ってると思うけど……世界大会で優勝すれば、どんな願いも叶うらしいわね」

「████は、叶えたい願いはあるの?」


リヴィラナはきっと、私に叶えたい願いがあるから世界チャンピオンを目指しているのだろうと察したのだろう。
……わたしは初めて、自分の願いを話した。
『母さんに会いたい』という願いを。

「……それは確かに、素敵な願いね。あなたの母さんも、きっとあなたに会いたがっているわ」

「だったら私も、あなたの願いが叶うように強くなる!
 一緒にがんばりましょ、████!」

うん、ふたりで世界一になろう!

満月に向かって、ふたりで拳を思い切り振り上げる。
夜空に満ち溢れた星のひとつひとつがみんな、わたしたちを照らす希望の光に見えた。