Eno.396 最寄近場

【遭難記04】



妹が死んだ時のことを思い出した。
悲しくて、しかしそれ以上に。
「もったいない」という思いが自分の中に渦巻いていたのを覚えている。

ああ、自分の分の飯を分け与えたのに。
ああ、我慢をして面倒を見てやったのに。
ああ、自分の身を粉にして育てていたのに。

顔も分からないのに、血のつながりがあるという理由だけで、彼女を。
もったいない、もったいない、もったいない。
そう思えてしまう自分が酷く薄情に思えた。