Eno.466 ヨッドラン

暗い空から青い空の下に

五十年以上前、突如湧き出した魔物たちにより我らの故郷は暗黒に包まれることになった。
〔註:正確には六十五年前〕
以来、人々は湧き出る魔物に脅かされた。

魔物に太刀打ちできるのは、人を辞めたもののみ。

魔物の眼を喰らい、特別な力を手に入れ、人でもなく魔物でもない化け物に成り果てたモノたち。
それのみがあの悍ましい魔物どもを討ち滅ぼせる。

だがそれは諸刃だ。
いずれ闇の力に蝕まれ、人を辞めた戦士たちは、魔物の仲間に成り果てる。

「では、私は?」
「この明るい青い空はなんだ?」
「知らないうちに私も化け物に成り果てて、討滅されたのでは?」
「それとも人を喰らったのか?」

明るく青い空。生まれて初めて見る空は、美しいのに泣きたくなる。

私は帰りたくないが、ここに留まることもできない。
生きる意味もわからないが、死ぬのは怖い。

私は。
私は。

誇り高いヨッドラン家の最期の当主だったのに。