Eno.652 クライル

(2)現状把握と回顧

覚えているのは、■■の連中に追われた末、崖下の海に飛び込むまで。

その際に、愛用の手袋も失くしてしまったらしい。

しかし、あれだけの銃撃を受けた筈なのに、銃創らしいものは見当たらない。

果たして運が良かったのか、悪かったのか。


僕はともかくとして、この島で同じように漂着した皆は、この島で生き抜く気があるようだ。

こうなれば、僕だけ座して待つと言うわけにも行かない。

皆が助力を願うなら、進んで手を貸す。

それは、僕の知る世でも当然のようにあった流れだ。



思えば、僕は■■の中では可愛がられていた方だったのかも知れない。

確かに世間一般では、僕らの仕事は人に顔向け出来るような代物じゃない。

それでも、その仕事は誰かの役には立っている。

僕は、そう思っている。そう信じている。

少なくとも■■は、そう教えてくれた。