Eno.359 大場川 福寿

*8

おい、フクジュ



どうされました、ケンスケ



思えば、あの深海に連れ去られてから、幼馴染である彼とはずっと一緒だった。
彼は僕よりも、背が高かったのに、随分小さく可愛らしくなってしまった。
あの子からは、ラッコ先生なんてよばれて、僕は、フクジュ先生と呼ばれて。

ラッコ先生――ケンスケは、いつも冷静だった。
僕よりもずっと、頭が回るし、僕よりずっと察しがいい。
こんな姿になってしまったなら、戻る方法もないから
だから、死んだほうがましだ、と言った僕を叱ってくれたのを覚えてる。
頼りになる幼馴染だった。


生きる事だけ考えろって言ったくせに、僕より先に、あの子のために命を落とした。
直ぐ追いかけた僕も、同じだったけれど。

『誰も犠牲を出さないようにする』
『そんで、皆で、ここを脱出するんだよ。わかったか、それ以外考えんな』

なんだか、また同じことを言われている気がした。