Eno.451 船長

船長の煩悶

疲れ、飢え、渇き。そして冷えときたもんだ。
この島はおれをまるで生者のように扱いやがる。
それがどうにも気に食わねぇ。

おかを離れて海に出たい。
おれが変わらず幽霊船長キャプテン・ゴーストだと確認したい。
手にした自由を失うわけにはいかねぇんだ。

*

昨日、砂浜から呼んでもメディルアリアは応えなかった。
そんなことは一度もなかった。
あいつがおれの元に来ないわけがない。
何かに、あるいは何者かに妨害されているのかもしれない。

あの嵐で人界うつしよへの道が途絶えたのか。
それともこの場所がおれの知る世界ではないのか。
あるいは父王に計画が知られたのか。

……違う、出てくるな、お前じゃない。

もう死んだんだ、おれも、お前も。
海に綴ったあの物語は、とうの昔に終わっているんだ。