Eno.16 ミオソティス

【4 花の咲く場所】


 疲れてた。
 たくさん休んでいたら、元気になった。
 みんなが集めてくれた素材で、
 離島に掛かる桟橋を作った。

「……みんな、誉めてくれたよ」



 フロルの家とか、ここでは関係ない。
 歪な花の魔法しか使えなくても、
 不器用でも、自力で集めた素材じゃなくても。

 ……僕はちゃんとひとつのものを作って、
 みんなの役に立てたんだ。

 思ったことがある。

「……僕はね、きっと
 咲く場所を間違えたんだよ」



 違う場所で咲けていたのなら。
 フロルの人間じゃなかったのなら。
 そしたら、僕は──

 ちゃんと愛が分かってて、
 大切な存在を傷つけることもなかったのだろう。


 それでも、芽吹いた場所で生きるしかない。
 違う場所へ行くなんて、許されない。
 この島から出る方法が見つかったら、
 そしたら、僕は。

「…………」



 ──あの世界に、帰る場所なんて、ないのに?