Eno.44 永埜目 詠

潰れた血豆と柔い腕

遭難して2日目。2日目?
2日目なのにもうこんなに発展してるの……?
クラフト部の岬峠ヶ峰先輩の指南や、ドルイド科の森野くんの……呪術とか……? や、
あとは烏丸先輩の……黒……魔術……? などなど……。
思った以上に多彩な同校生たちのおかげで無人島は著しい発展を遂げている。
これなら救助を待つまで保ちそうだ。食料も安定してきたし。

そう長くは居ないだろう場所だけど、烏丸先輩に声を掛けられて一緒に岩風呂も作った。
ほとんどは先輩がやってくれて、僕は先輩のハト……じゃなくてシャドウクロウに守られながら隙間を埋めていった程度だけど。
これでみんなが過ごしやすくなるといいな。仕切りも男湯女湯に加えて個室も作ったし。


普段はふざけている先輩も、あの黒い衣装を脱いだら、普通の、頼もしい男の人なんだなって思った。
黒魔術を使う人って、なんとなく、ガリガリとかヒョロヒョロのイメージがあったけど、実際はそんなことはなくて。
重い岩も持てる、相応に太い、力のある腕。
僕の方がよっぽどヒョロヒョロで、重いものを持って手伝えもしない棒切れみたいな腕。
やっぱり違うんだな、って思った。

なんとなく悔しくて、僕もやればできるのかもしれないなんて思って、
最初に岬峠ヶ峰先輩に教えてもらって作った斧を初めて自分で使った。
木は僕なんかより全然硬くて、しっかりしてて、重くて。
すぐに腕は痺れて痛くなって、手のひらはあっさり負けて血豆ができていた。
非日常に迷い込んだからって、なんでもできるなんてこと、ないんだな。

「……ばーか」


自嘲した独り言、誰にも聞こえてないといいんだけど。