Eno.44 永埜目 詠

南棟1階、東端の教室

きっかけは、呆れられるほど些細なことだったと思う。
忘れ物をして注目されたとか。
些細な陰口とか。
ちょっとしたことでみんながくすくす笑うとか。
そんな塵芥が積み重なって、教室へ入る足が止まった。
休んだ次の日の視線はもっと痛くて、余計に行きたくなくなった。
先生は半笑いで保健室登校を許してくれた。

南棟1階、西端の教室。
中学3年生の記憶は、その教室の窓から差し込む西陽に彩られていた。