Eno.197 小瀧と南海

行動記録:二日目

小瀧の手記

全く酷い目にあった!
砂浜を歩けば何か踏むし、岩場を歩けば転げ落ちる。日頃の不摂生と運動不足を呪いたくもなるが、完全に自業自得だ。
とくに海に落ちた時はもうだめかと思ったが、こうして記録を残せている。
彼にはいつも感謝しているが今回ばかりは本当に助かった。一人だったらおぼれてそのまま……そのまま、どうなっていただろうか。

体力がなくなれば人の形を維持出来るのかは判断がつかない……が、転落して半死半生な状態でも特に人の形が崩れる事は無かった。
もしかしたら、この場所では人として……(ぐしゃぐしゃと書いた文字の上に線が走っている)

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島の天気は変わりやすいようで半日もしないで天候が一変する事もある。雨に降られる前に貯水用のコンテナを用意できたおかげで、水不足は若干緩和されただろうか。だが、テントや板材を組んだだけの拠点は雨風を凌ぎきれず、この常夏の島で寒さすら感じる状態に陥ってしまう。
その後なんとか焚き火を常に用意しておける場所が組めたが、これはもう少し早くするべきだったようだ。判断が難しい。

この島に漂着した人達は皆、各々の役割を見つけて動いているようでなんとも心強い。自分も無理のない程度に頑張るとしよう。まずは命を大事にしないと。


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南海の手記

島に旗が立った。
確かに、生活基盤と同時に外部への脱出方法も考えなければいけない。1週間……そう長くない期間だが、今のところ他の皆も精力的に動いている。気候のせいか、景色のせいか、はたまた、この島にそういう力があるのか……状況に比べて危機感があまりない気がする。
だが、下手に萎縮するよりいいだろう。だが、それなら一人くらいは気を引き締めていてもいい筈だ。

生活基盤は少し整ってきた。焚き火の火がここまで心強い事もそうないだろう。だが、拠点本体がまだ不安が残る。もう少し、風雨に耐えられるようになるといいのだが……。
少し休んで、また考えよう。不思議と、大丈夫な気がするのはただの油断でなければいいが。