Eno.297 ハイウェイマン

無題

うちの地方には、命名に暗黙のルールみたいなものがある。
長男、長女は頭文字がAで始まる名前、次男次女は頭文字がBで始まる名前、三男三女はC……と言った風に、アルファベット順に続いていく。

一人の子供が大体何歳か、イニシャルは何かが分かれば、兄弟の数や規模、親の年齢について結構想像がつく、案外便利なルールだ。


そしてこのルールは、その地方の子供達にも遅かれ早かれ、大切な気付きを与えてくれる。


村の顔役や、家の主は大体A。時々B。

親から土地を分配されて、独り立ち出来るのはBか良くてCまで。

村にいる大体のC、そしてほとんどのD以下の大人は、親やAの家に厄介になって、自分の土地を持たずに手伝いをして過ごす。

それが嫌なら街に出ていって、働き口を探すか、領主様の軍に徴用されるか。

AとBの兄にならってオリーブの木の面倒が見られるようになっても、
順当にいけば将来自分の所有するオリーブの木なんてどこにも無い。

それに気づいたのが8歳の秋の頃、手伝いしている最中だったか。