Eno.433 コンラード・N・A・ウエザラル

波音だけが・・・・。

 

コンラード
「・・・・・・・・」



彼が倒れて・・・・幾許か時間が過ぎた・・・・。
この場所には誰も来ない・・・・人目の少ない時々波に曝される岩場の陰に
『彼の肉体』が倒れている。

何れ時が来たら何かの生物に、その身は食べられて行くかも知れない・・・・。





あゝ・・・・静かだ・・・・漸く静かな時を迎えれたよ。

一緒に連れてきた『アイツ』には悪いが・・・・このまゝエイリークと
運命を共にさせてもらおう。

どの道、多数の漂流者達が居るんだ・・・・誰かが救助の為の目印を
建てるだろうよ。

そうすれば・・・・救助船に乗って帰れるだろう・・・・元の世界へと。

とりあえず・・・・アイツには僕等が来ている事を黙秘していて貰わな
ければ困る・・・・でないとエイリークを見つけて元の世界に返そうと
する輩が必ずいる筈だ・・・・それだけは何としてでも止めて貰わな
ければいけない・・・・でないと『あの2人』の手に渡ってしまい
再びエイリークは永遠の地獄を味わうだろう・・・・それだけは
避けねばいけない。

まぁ・・・・真っ先に倒れて動けなくなった僕が言う事ではないけどね。

とりあえず・・・・僕は、この場所で島が沈む時まで待とうか。
海へと還る為にね・・・・。




ここには今は誰も来ることが無い・・・・彼等の事を知る人物は『あの青年』
以外は居ない筈だから・・・・。

この岩場に横たわる『彼』の肉体は時々寄せ来る波に曝されている・・・・。


この場所には・・・・今は、たゞ波音だけが鳴り響いている・・・・。