Eno.715 シュリ

再会

いま此処に在る喜びがないわけではない。
いくらか混じる見知らぬ顔も縁者のようだ。
相変わらずの拠点内を見ているだけでも自明だが、
島を取り巻く状況によほどの変化がなければ脱出も成るだろう。


しかし、これで二度目の失踪になる。
国宝であり最強兵器である機竜の鍵を預かる身でありながら。


あの時は。
失踪前の切迫した状況も明らかで、
人的、物的、いずれの証拠も多く、
そこに思惑がないと証する方法はいくらでもあった。

だが今は。
客観的に見て何らかの意図を疑われるに十分だ。
アーシャと離れていたのも不利に過ぎる。
個々人の心証など関係ない、必要なのは確かな証だ。


わたしの立場が揺らげば故国にも累が及ぶ。
あらゆる事柄が悪意ある憶測をもって語られるようになる。
そうして作られた不利な状況は、いずれあの時と似た事象を引き起こすだろう。