Eno.181 潮彩のリューカ

蝋の翼

世界大会の決勝戦の相手は、日本代表の『獅子王 斎牙ししおう さいが&イフリオン』。
パートナーのイフリオンは、火属性のライオン型ヒュマモンだ。
まさに百獣の王、このバトルに相応しい風格と言える。

相性の上では有利と見たけど……ここまでくるとそれも当てにならない。
それは属性の不利を覆したことがある、わたしだからこそよく知っている。

少し落ち着かない様子のリヴィエールを、わたしがなだめる。
おっとりしているリヴィがこうなるのは珍しい。いつもと立場が逆転したわね。
世界大会の決勝戦は、さすがに荷が重かったかしら?

でも大丈夫。わたしとリヴィは、無敵のコンビだもの!

―――
――


試合開始の合図と共に、今シーズン最高のバトルが幕を開けた。

「「『フレイムブレス』!!」」

「「『アクアブレス』!!」」


ぶつかり合う心!

「「『紅蓮乱舞』!!」」

「「『タイダルウェーブ』!!」」


ぶつかり合う技!

「「『煉獄炎爪』!!」」

「「『フィンブレード』!!」」


ぶつかり合う体!

最後までどちらが勝つか、誰にもわからない戦いは長く続いた。
一瞬でも気を抜けば、どんなに優勢だろうと劣勢へと転じてしまう。
それはどちらのコンビにとっても同じだった。

実力が拮抗する相手とのバトルで大切なことはふたつ――確実に勝てるチャンスを見逃さないこと。
それ以上に、自分の相棒の絆を信じること!!

イフリオンの防御を破った。……今だ!

「「『ドラゴストーム』!!」」



翼を広げ、わたしたちは世界の頂へ飛んでいく。

もらっていくわ――富と名声、そして幸せを!

―――
――


「今回の世界大会優勝は――」

「████選手&リヴィエール~~~~~ッ!!!」



実況が高らかに試合結果を告げた瞬間。会場の全方位から歓声が鳴り響いた。

ああ、やっと。わたしの旅は終わったんだ。
わたしはすっかり、真っ白な灰みたいに燃え尽きた。
確かにバトルやイフリオンの炎は、最高に熱かったけどね。

「……おめでとう!」

世界大会優勝を、最初に祝ってくれたのはリヴィエールだった。
連日の戦いでボロボロなのに、こんなにも喜んでくれた。

サイガとイフリオンも、実況や世界中の観客も。みんなお祝いしてくれている。
わたしは感極まるあまり、ライブ放送のカメラの前で泣きそうになった。
リヴィの気遣いのおかげで、わたしの痴態は撮られずに済んだけど。

バトル後のインタビューを一通り終えて、わたしはようやくほっとした。
この後は表彰式を経て、世界大会優勝の褒賞授与、つまり願い事を叶えてもらうのだ。

ついに、ついに母さんに会えるんだ。
わたしは目一杯クールダウンに努めつつ、表彰式へと向かった。

――それが、悲劇の始まりになるとも知らずに。