夏のキャンプ ー 追想
「こっち楽しそうじゃん!行ってみようぜ!」
「待ってっ……!そんなにはしゃぎすぎたらコケるって……!」
また夢を見た。
俺は夏恒例のキャンプに来ていて、河原で遊んでいたんだ。
だけど当たり前のように俺は知らないはずの"あの子"と一緒に、冒険しようとしていた。
走り回る俺はすげえ元気で、怖い物知らずって感じなのに、一緒に遊んでいる"あの子"はそんな俺に飽きもせず一緒に走り回ってくれていた。
息切れした高い声が追いかけては引き留めてくる。
俺はバカだから、追いかけっこだと思ってた。……だからバランスを崩しそうなくらいスピードをあげてたんだっけ。
「いてて……」
なので、当たり前だけど怪我をした。
かなり痛かった気がする。
「もー!ツナグはおっちょこちょいなんだよ。
自分を過信しすぎだって!大丈夫?」
「うるせ~……こんなの平気だって……」
「いや、涙目になってる。痛かったでしょ!」
「な、泣いてねえよ!男の子だし!」
「男の子も女の子も関係ないよ!もう戻ろ!
ほら、手貸して」
「あ、ちょっ……ちょっ……!」
"あの子"はうざいし叱ってくるけど、俺を心配して手を差し伸べてくれるもんだからいつも手を伸ばしてしまうんだよな。
『だって嫌いじゃないから』『こんなやり取りは何度だって経験したから』
そんな思考が俺の中に過る。
"あの子"って……誰なんだよ。
「私なんでも食べれるから!もぐもぐ」
「ウチのバーベキューなんだからちょっとは弁えろよ!」
お母さんとお父さんはいいじゃないか、いいじゃないかと俺を宥めている。
その日、結局俺は強引にキャンプ場に連れ戻されバーベキューを一緒にした。
"あの子"は元気に好き嫌いなく食べてた。
俺は……ピーマンだけは食べなかった。
いつから見始めたのだろう。"あの子"と一緒に居る夢は楽しい。
家族と一緒にキャンプしただけで、同い年の友達とは全然バーベキューしたことがなかったからかな。
だから、ありもしない友達が夢に出て来て一緒にバーベキューしてるのかも。
「バーベキュー、美味しいね!
連れてきてくれてありがとう!
また来年の夏もお世話になっちゃおうかな」
「……………」
起きた次の日、傍にサラマルが居たことに気付いた。
ああ、そっか。
去年から一人じゃなくなったもんな。
「サラマル、ここ脱出したらまた今年の夏はキャンプしにいきたいか?
「うん!おれも行きたい!」
「はは、サラマルはなんでも食うもんな!」
パートナーのヒュマモンが傍にいるおかげで、俺は寂しくないと……そう思える朝だった。