Eno.181 潮彩のリューカ

夢の終わり

世界大会の、表彰式。
若きチャンピオンの誕生の祝福の言葉が、未だに雨のように降り注ぐ中で。
わたしは歓声轟く花道を歩き、表彰台へと登る。
地方大会から登り詰めた頂上からの景色は――まるで、天国みたいだ。

盛大な音楽と祝辞が述べられ、わたしにトロフィーが授けられる。
トロフィーは子どもの両手にも収まるサイズだけど、なんだか重たく感じた。
それもそのはず。わたしはここに至るまでに、
同じように努力してきたテイマーみんなの願いを、手折ってきたのだから。

それでも叶えたい夢があった。わたしには、会いたい大切な人がいる。



カメラマンにわたしのヒュマモンギアで写真を撮ってもらって、盛大な表彰式は幕を下ろした。

―――
――


いよいよ、わたしの願い事を叶える時が来た。
これがヒュマモンバトル世界大会最大の、目玉といっても過言じゃない。
ずっと、この時を待っていた!

華やかな表彰式が終われば。会場に、何かの儀式のような舞台が用意された。
科学で栄えるこの世界でやることにしては、魔術的な雰囲気で怪しげだけど、
これに願いを何でも成就させる秘密が隠されているのだろうか。

わたしが聞いた話では、過去の優勝者の願いは一攫千金や不治の病の完治、
さらには死者の蘇生に成功した例もあった。
だから、わたしの願いだって叶うはず。

儀式台に登ったわたしは、求め続けた幸せを頭に思い浮かべる。
みんなにとってはありきたりだけど、わたしにとっては大切な願いを。

リヴィエールも見守る中で、わたしは慎重に口を開いた。

「わたしの願いは。わたしを産んだ母さんに、会うことです」



――――わたしがその宣言した瞬間。異変は突如として起こった。

会場上空におびただしい暗雲が立ち込め、人々は皆混乱する。
そして雲に風穴が開いたと同時に、会場全体が眩い光に包まれた。

光が止むと、リヴィエールがいた場所には、
彼女を思わせる、海のように青く綺麗な髪をした、壮年の女性がそこに倒れていた。

何が起こったのか、当時は全然わからなかった。
けど今なら思い出せる。

わたしは――

「……ぷっきゅい?」


ヒュマモンになってしまったのだから。