(4)きっかけ
いつからだろう。
歯車が食い違い始めたのは。
僕も数をこなし、チームの一員として自信を付けた頃。
その日は、組織のドンが客を招いて別荘に滞在するため、僕もボスと共に護衛として行く事になった。
僕は何故か、ドンに気に入られていた。色々な意味で。
ドンの前で■■■■を披露する事になったり、そのまま■■の相手もさせられたり。
勿論僕は組織の一員なのだから、それを拒否する選択肢など最初から持ち合わせてはいない。
今日もまた、ドンの■■■■として可愛がられるんだろうな……
そんな沈鬱な心持で同行していた。顔には出さないが。
ボスから受けた命令は一つ。
「直に別荘のテラスに身を乗り出す奴がいる。これを始末しろ。其奴は、我らが組織の脅威だ」
僕の持ち場は、テラスの直下にある崖の下。
誰かが身を乗り出せば、顔は見えないけれどその動きは僕に丸分かりだ。
逆に、上からの視点では僕の顔も動きもろくに見えない。
夜間であれば尚更だ。
別荘の護衛をしながら、いつテラスに身を乗り出す組織の脅威が来るか。
僕は、淡々と狙っていた。
そして、その時は来た。
別荘のテラスに、身を乗り出す影一つ。
僕は、その瞬間を逃さなかった。
その場に佇んだまま、テラスと手に仕込んだワイヤーで、影の素っ首を刈りにかかる。
ボスの命令があった時から、そっと引っかけていたものだ。
手応えアリ。
命脈を断った瞬間がワイヤー越しに伝わる。
上からは、何事か悲鳴が上がる。
それはそうだろう。
肩より上を刈られれば、仮に全てを断たれてなかろうとそれは即ち『死』を意味する。
その状態で生きているモノなど、生物であれば居るはずがないのだから。
いつも通り、仕事が終わった。
そう思って、ワイヤーを仕舞ったところで。
僕の落とした命の印が、崖の下まで落ちてきた。
トン、と地面を跳ねる。
僕は、脅威となる筈だった者の顔を一瞥して、その場を去る……
……
「……!!?」
……
……つもりだった。
信じられない光景に、思わず息を呑んだ。
脅威と伝えられ、落としたはずの。
地面に転がった、人だったモノの残骸。
そこに張り付いた顔には、見覚えがある。
……否、見間違える筈もない。
それは他でもない。
組織のドンのものだった。
歯車が食い違い始めたのは。
僕も数をこなし、チームの一員として自信を付けた頃。
その日は、組織のドンが客を招いて別荘に滞在するため、僕もボスと共に護衛として行く事になった。
僕は何故か、ドンに気に入られていた。色々な意味で。
ドンの前で■■■■を披露する事になったり、そのまま■■の相手もさせられたり。
勿論僕は組織の一員なのだから、それを拒否する選択肢など最初から持ち合わせてはいない。
今日もまた、ドンの■■■■として可愛がられるんだろうな……
そんな沈鬱な心持で同行していた。顔には出さないが。
ボスから受けた命令は一つ。
「直に別荘のテラスに身を乗り出す奴がいる。これを始末しろ。其奴は、我らが組織の脅威だ」
僕の持ち場は、テラスの直下にある崖の下。
誰かが身を乗り出せば、顔は見えないけれどその動きは僕に丸分かりだ。
逆に、上からの視点では僕の顔も動きもろくに見えない。
夜間であれば尚更だ。
別荘の護衛をしながら、いつテラスに身を乗り出す組織の脅威が来るか。
僕は、淡々と狙っていた。
そして、その時は来た。
別荘のテラスに、身を乗り出す影一つ。
僕は、その瞬間を逃さなかった。
その場に佇んだまま、テラスと手に仕込んだワイヤーで、影の素っ首を刈りにかかる。
ボスの命令があった時から、そっと引っかけていたものだ。
手応えアリ。
命脈を断った瞬間がワイヤー越しに伝わる。
上からは、何事か悲鳴が上がる。
それはそうだろう。
肩より上を刈られれば、仮に全てを断たれてなかろうとそれは即ち『死』を意味する。
その状態で生きているモノなど、生物であれば居るはずがないのだから。
いつも通り、仕事が終わった。
そう思って、ワイヤーを仕舞ったところで。
僕の落とした命の印が、崖の下まで落ちてきた。
トン、と地面を跳ねる。
僕は、脅威となる筈だった者の顔を一瞥して、その場を去る……
……
「……!!?」
……
……つもりだった。
信じられない光景に、思わず息を呑んだ。
脅威と伝えられ、落としたはずの。
地面に転がった、人だったモノの残骸。
そこに張り付いた顔には、見覚えがある。
……否、見間違える筈もない。
それは他でもない。
組織のドンのものだった。