Eno.42 空にて寄り添う、二つ星

~休題~

――其の日は、冷たい雨が降っていた。

傘をさして歩いていると、か細い鳴き声が聞こえた。
声の方角へ向かってみると、其処は開いた側溝で。
事切れた黒猫と、寄り添いながら鳴き続ける白い子猫が居た。
恐らく、野良の親子だったのだろう。

私は一度来た道を戻り、近くの店で子猫用ミルクとタオルを購入し。
結果として、二匹を連れ帰る事にした。
親猫の遺体は、家の庭に埋め、魂が安らかであるよう祈りながら弔った。

子猫には“  ”と名前をつけ、出来得る限り可愛がりながら育てた。
最初は  も酷く怯えていたが、次第に打ち解けてくれた。
人懐っこい甘えん坊で、其れでいて誠実というか、忠義心が強いというか……
私の家族も、  の事を目一杯の愛情をもって接してくれていた。

年月が経ち、小さかった  もすっかり成長し、穏やかな日々を過ごしていた。
そんな或る日、私達は旅行で旅客船に乗っていた。
窓から見えるは一面の海。
  も、雄大な景色を見るのは初めてで、私の腕の中でじっと水平線を見つめていた。

其れが、一瞬で。
大きな揺れと共に、平和な時間と私達は、其れは其れは大きく、そして遠くへ投げ飛ばされた――