Eno.53 ノア・イトゥドノット

13:わからない[ノア]

私は愛や恋がわからない
参考になるかもしれない存在に言われるがまま参考してみたり
周囲に愛や恋の違いなどを聞いてみたり
自分で考えてみて義兄弟や色んな関係になったり…出来る事は全てやってきた、つもりだ
まあ…何故か其処から義兄弟が増えたり想定すらしてなかったママや義父にもなってたことはあるが…後、参考にしていた存在から"俺の"という関係とか俺の、何だ?友達とかじゃないのか…?何だ"俺の"って…?未だにその真意は謎で

只まあ、そうして得た関係達は確かに有意義だったと思っていたし
私も愛を与えていたと思っていた
幸せだったと、思っていた
参考にしていた存在から今まで得てきた関係定義に対し『お遊び』と言われるまではそうだと思っていた
その時、私は処刑人の在り方しかなく
けれども今の時代に処刑人というのは必要とされていないのだと気付いていて代わりに定義を求めていたけれど
其奴は処刑人の代わりに据えるものではないと言っていた

其れを聞いて私は何処か納得していてだって実の家族ではないのは確かだから
でも…其れからは正直、堪えたものだよ
彼らと関わってきた関係が全てお遊びロールプレイに見えてきて
けれど後日になって何時もママと呼んでくる息子、その嫁から『ママが出来て喜んでいた』主旨の事を言われて
どちらの言い分が正しいのか
分からなくなったのだ
分からなくなったしいくら考えても想っても自分が苦しくなるだけで
其れを周りに悟られて傷つくことも嫌だったし良くわからない対人でのトラブルも見舞われていたから死神に感情を、欲を削いで貰った
其れからはせめて皆に悟られないように私が旅に出るその日まで関係役割を完遂させた
愛とは何か
分からなくなったのは其処からだ
そしてこれ等の関係を『お遊び』と称した存在から渡された鍵を使って旅に出た
結局、また『独り』だ理由を共に考えると言うのもやりたいことを共に探すというのも独りでは出来ない、出来ないのに居ないのだ
だから、どうでもよくなった
もう何も考えたくはないし何も見たくもない
結局、私は人の心を理解出来なかった『化物』だった








本当は愛はあった、自覚は無かったけれど特別な感情も芽生えつつあった
その時の現状に、トラブルに、自覚してしまった重い感情に心が耐えきれなかったからとある死神に削ぐ選択をし
芽生えるかもしれなかった感情ごと死神に回収され無かったことになった
今、此処に居る彼は定義や愛、感情に欲と全てを喪った結果
無気力で他者を自然すぎるほどの演技で擬態処理をし
愛や感情、欲を心の其処から軽蔑しながらも唯一の友人からの願いや約束だけはと其れに縋り
それに縋りながらもを救済と定めていて自らが望む終わり時を描きながらその実現の為に動いている"化物"と成った
"化物"はある街で処刑人としての職務を完遂させながら合鍵を利用し
自らの呪いを解呪する術を探しながら死に場所と終わり時を探すし此からもそうするのだろう
『その友人の真実や既にもうこの世に居ない事も知らないまま
終わりのないのが終わりという未来の結末への片道切符を握り絞めたまま走っている事さえも気付かないまま』


[ノア]