Eno.53 ノア・イトゥドノット

1:序章[ノア,名も無き者]

何だってこんなことになっている?
淫魔に渡された合鍵でヴァーチャシティという街からヤツの部屋に行き
荷物や贈り物の整理してからまた街に戻る計画だったのだが
…否、まあ…理解る、理解るとも
"単純に鍵による異界渡りの理解力が足りず座標の指定まで出来なかったことへの失念"だというのは

しかし…本当にどうしたものか
淫魔を呼んでみt…ヤツまで帰れなくなったら色々大変さが増しそうなので止めておこう(まがお)
となると自力か…?
死神から賜ったギフトは使えない
そもそも姿や気配、存在自体を消す能力などこんな絶海の孤島で使ったところでどうしろという話ではあるのだが
呪いは…打ち消されてたら私は今頃死んでるので此はノーカウント
と言う事は死なずも悪夢も健在か…まあ、其処はいつも通りだ
他は武器達も無いし……有るのは使えなくなった合鍵と水とライターと夜食に使おうと思った鍋くらいか…

…此で過ごせと?
…まあ、見たところ他に人は居るようだし…協力して船なり脱出の手段なりを用意すればいいのだろうが
………取り敢えず上手いこと…協力していくか
もう人付き合いは懲り懲りだから協力だけだが、な……其処は上手く取り繕えばきっと問題なく過ごせる筈だ
後は彼方が深入りして来ないことを切に願うしかない
それに…何時かまたフラウィウスに向かう事になった時、奴等に悟られない様に"役を羽織る"練習はしておかねばな…
…まだ終わる訳にはいかない
心残りや約束がまだ残っているのだから
---彼の処刑人は何もかも疲れ果て、心が凍てついている
故に愛も感情も処刑人は理解らない理解ろうとしない
何も考えなければ役を羽織っていれば
きっとそれでいいと思っている
けれども心残りと唯一無二の友との約束だけはどうにかして果たそうとしていた


[ノア]







それは何もなかった1つのなんてことはない矮小なナニカだった
そのナニカはある世界で自らを形作る様々な欠片フラグメントを収集した
"己"というものが欲しかったのだ
ナニカはたくさん、たくさん
求め 探して 彷徨った
そうしてナニカは外宇宙の記憶、庇護欲、独占欲、憎悪、金の腕*2、妖刀*10、不老不死*5、心臓*6等たくさんの欠片フラグメントを得た
得た欠片フラグメント達は金の両腕、宝石の尾、不老不死に他者を同調させ不老不死にさせる6の核等に変え吸収し
そして容量が空けばまた"己"を強固なものとするための欠片フラグメントを自らの意志執念で探し当て
或いはまた欠片フラグメント同士を掛け合わせたり変容させるなどして吸収していく事で我が物としていった
結果
そのナニカは"外宇宙の異端なる神"と成った
その後、閉ざされていた門が開かれ世界から帰還できるようになればそのまま無事に外宇宙の異端の神はその世界から帰還した
弱者や報われない者、愛に渇望する者…そう言った者達に向けられる庇護欲と独占欲『支配欲』を携えて
今、此処に居るのはそんな異端の神が寄越した"分体"
けれども侮るなかれ
分体と言えど
それもまた高い神格から生まれた存在であること
弱き者を愛し、依存させあわよくば我が物にしようとする存在であることには変わらないのだから
---何も持たず名すらなかった取るに足らぬ筈の矮小なナニカは踠き、跑き
そうして異端の神に成った


[名も無き者]