Eno.206 エンティティとフィン

日照りの下で 海を見る

「蒸し暑くなっているとは思いましたが、
 こんな猛暑になるとは、予測できませんでした……」


カッと照りつける日差しは、屋根の影から眺めているだけで、目に焼き付くようだ。
かき氷を食べて涼を取っている子供も、体力を取られてしまっている様子。
ぴったりくっ付いてくる彼女の頭を撫でながら、緑の目をゆっくりと巡らせる。

「ここまでの快晴は久しいはずですが、喜ぶ気にはなれませんね……
 ……ああ、晴れと言えば」


身体を起こして、屋外を眺める。
浜辺の方を見れば、日差しを遮る雲のない、海と空ばかりの光景だ。
浜にあれだけ人工物が流れ着くなら、見える範囲に有人島があるなり、頻繁に船舶が行き交うなりしても、
別段、おかしな話でもなさそうなものだが。

「メアさんも言っていましたが、本当に何もない……陸地は、離島を含めたここだけなのでしょうか。
 浜で拾った手紙には、定期的に船が通るとはありますが、果たして近くまで寄ってくれるかどうか……
 ……いけませんね、不安要素ばかりに意識を向けるのは」


予測だけで、いたずらに悪い予想ばかり重ねても、良いことはない。
今後のことは、まずは無事に、この酷暑を越えてから悩むことにしよう。