Eno.321 エヴァンジェリン

眠るあなたの隣で



……ラス、私はあなたに嘘をつきました。




どうしてあなたは私を「イヴ」と呼んだの?

だって、その名を呼んでいたのは…あの冒険者様たちだけ…

だから、貴方に

「イヴって呼ばせてもらおう!」

…そう言われると思わなかった。



貴方がそう呼んだから、思い出したの、全部。


私、本当はあそこに帰りたくない、ここにいたい。


いいえ、大好きな所よ。
あそこには私を大切にしてくれる使い魔や、
少しの間滞在して私を家族のように大切にしてくれた冒険者様の思い出もいっぱいある。
私は彼らに「イヴ」と親しみを込めて呼んでもらっていた。
「エヴァ」じゃない。「イヴ」。

…大好きな所よ、貴方に案内したい。



……でも、これは「私の夢」




だって、私はあの城に縛られて、動けないのだから。



何故、私はあそこから離れることが出来たのか、

私はなぜこの島にいるのか、



それは「今眠っている私」が望んだ夢だから、


あなたも、私も、が望んで生み出した存在に違いない。




でも、この島の生活が終わったら、

夢から覚めて、

私は、使い魔達と静かに城に寂しく生活をする。




…正直なことを言わないでごめんなさい。

どうか、最後までこの生活を楽しませて、思い出を作らせて、



夢を見ている私に、幸せな夢を見させて…




ああ、嫌、寝なくちゃいけないのに、寝たくない…まだ、あなたの寝顔を見ていたい…