Eno.17 明けぬ夜の灯台守

あたまがとけるはなし

──これは熱いのが苦手で、これは眩しいのが苦手だった。

晴れを知らせるような快晴模様は彼の目を焼いている。
文字通りの意味ではない。物理的に焼かれているわけではない。
ただ、彼には日光は重たかった。


──これは熱いのが苦手で、これは眩しいのが苦手だった。

茹だるような暑さなんて体感したことがなかった。
厚手のコートを未だ羽織っている。
彼の服装から分かる通り、彼にとって夏の暑さは未知なる物だった。




「遠き星はいつだって冷たいだわね〜〜」



「うちの星との距離の分、感情も底冷えしてんのかもしれね〜や」




空を駆ける船。
天船は人を乗せて進んでいく。
最近はめっきり、転移装置を使う方が増えたけど、オールド・ヒューマンやら観光用やら、単純に輸送やらで、まだ船の出番は多い。
輝く星のないこの領域にて。
この灯台は場所を知らせるために、遠くに光を飛ばしていた。


──彼は夜に暮らしている。