Eno.16 ミオソティス

【8 閑話 フロルの花魔法について】

 
 フロルの家は、花の魔法の家系だ。
 フロルの人間は自在に花を咲かせ、
 花の持つ意味にちなんだ魔法を使う。

 黒百合は呪い、睡蓮は破滅、
 クローバーは幸運、ユーカリは再生。
 フロルの人間が花に魔力を込めれば、
 花は魔法の触媒へと変わる。

   ◇

 ミオソティスの花の別名は勿忘草。
 持っている意味は真実の愛と、記憶。

 愛を知らない僕に「真実の愛」なんて
 馬鹿げた皮肉みたいに思えるけれど。
 これから愛を見つけられるのなら、
 その花言葉も嘘ではなくなるのかな。

 お父様を殺してからようやく、
 花魔法が使えるようになった。
 でもまだ安定しない。狙った花は咲かない。

 ミオソティスの花だけは、
 自在に咲かせられてたのに。
 この世界でも、出来るかな。
 咲かせられれば、いいな。

「…………いつかは」