第三章【それから】
マスターは一命を取り留めたが、記憶を失っていた
書き置きを残して病院へ運んだ後、逃げるように元の拠点へと帰った
廃病院を改装したと言う母さんの拠点に、私も住む事になった
そうして、一週間が経った
マスターの言ってた通り、母さんは優しくてしっかりしてたから
生活に関しては苦じゃないどころか充実していた
……外にはあまり出してもらえなかったけど
「ただいま。買ってきたよ」
渡された袋には店で買ったと思われる焼きたてのパンが入ってた
「ちゃんと食べろよ」
母さんはそう言って、相変わらず虚ろな瞳で私を見ている
洗い流したつもりなんだろうけど、ほんのり血の匂いがしているし
ご飯はいつも私の分しか用意してないし
でも不思議と恐怖心は感じず、それが私の日常だと思うようになっていた
母さんの事も少しずつわかるようになった
盗賊や悪人を憎んでて、時折血の匂いがするのはそのせいって事
味覚が無い事、そのせいでご飯を食べたがらない事
最近はそれでも食べるようにしてたけど
マスターの一件から完全に受け付けなくなった事
それを私に悟られないようにしている事
「……静空はこのパンが好きだね」
私の名前を呼ぶ時だけ、声色が優しくなる事
書き置きを残して病院へ運んだ後、逃げるように元の拠点へと帰った
廃病院を改装したと言う母さんの拠点に、私も住む事になった
そうして、一週間が経った
マスターの言ってた通り、母さんは優しくてしっかりしてたから
生活に関しては苦じゃないどころか充実していた
……外にはあまり出してもらえなかったけど
「ただいま。買ってきたよ」
渡された袋には店で買ったと思われる焼きたてのパンが入ってた
「ちゃんと食べろよ」
母さんはそう言って、相変わらず虚ろな瞳で私を見ている
洗い流したつもりなんだろうけど、ほんのり血の匂いがしているし
ご飯はいつも私の分しか用意してないし
でも不思議と恐怖心は感じず、それが私の日常だと思うようになっていた
母さんの事も少しずつわかるようになった
盗賊や悪人を憎んでて、時折血の匂いがするのはそのせいって事
味覚が無い事、そのせいでご飯を食べたがらない事
最近はそれでも食べるようにしてたけど
マスターの一件から完全に受け付けなくなった事
それを私に悟られないようにしている事
「……静空はこのパンが好きだね」
私の名前を呼ぶ時だけ、声色が優しくなる事