Eno.396 最寄近場

【遭難記12】

「頭痛が痛い~。
 いやトートロジー的な意味ではなく」


「思えば常備薬が普段ならあるもんな。
 ままならねえ無人島ライフ。
 そうか、包帯類は用意できても薬の類が手に入らないんだなあ。
 偏頭痛持ちには辛い環境かもしれん」


「しかしそうなると気圧が爆弾ってことだ。
 本当にそろそろ空模様がヤベーと見た。
 天気が荒れてる間は大人しくしとくに越したことはないな」


「…………。痛ぇ。寝とこ」





ずきん、ずきん、と断続的にこめかみに走る煩わしいそれが、思考の邪魔をする。
フラウィウスで天気が荒れることは無かったな、とふと思った。
あの連中は今どうしているだろう。また各々の世界のいずこかで戦っているんだろうか。
懐かしい、会いたい、と思う。しかしその人物の顔も思い出せなかった。