Eno.44 永埜目 詠

拠点から56歩、海岸線から6m

東屋を作った。
自分が作ったというか、烏丸先輩にほとんど作ってもらった。
ベンチを作るときも支えてもらって、結局屋根を張るのもしてもらって、

「…………」


「はっ、いやいや、
 ベンチ作るとき近かったなとか考えてる場合か」



……まあ、他人がすぐ近くに居て、緊張したのは確か。
それが向こうにも伝わったのか、怖いかと尋ねられた。
でも、きっとみんなは怖くないと思う。
僕が、怖くないはずのものを、怖がってるだけだ。
僕が間違ってるだけだ。
だから大丈夫。息を潜めて少し我慢すれば。
恐怖の波が過ぎていくのを待てばいいだけなんだから。


でも、
先輩といるのは、怖いというより……。
…………。



「……ああ」


「嫌だな」


「物語みたいな、綺麗なものは」


「手に入るはずないんだから」



「望むのも、烏滸がましい」