Eno.115 ハイド・スキン

無題

居ないと思ってたやつが居た、そんな経験はあるか? 私は私自身がそうだ。
それはそうとついこの間まで気配しかなかった奴のツラを漸く拝めることができた。私は面出してないけど。

滑り出しは順調、後も順調。
一時期は飯が怪しい時期もあったが、今は余る程。まことに残念な事に下層なんかの暮らしより随分と良いが、捨てなければならないのも事実だ。
死ぬよりかはマシだが、無くなる事が分かり切ってる安寧もまた不幸なんかもしれない。

或いは、異世界ってヤツが全てこうなら……
いや。詮無い話だ、あんまりにも。

あいつらが私を忘れる様に、私もあいつらとここの暮らしを忘れなければならないだろうや。
それが生きる為ならば。