Eno.297 ハイウェイマン

Merry men

街で領主軍の出立と、銀肩の騎士を見てからの自分はというと、まず空いた時間は村の馬小屋に行くようになった。

早速乗馬を教えてもらおうと思ったのだが、散々馬の手入れの手伝いばかりさせられて、実際に馬に乗れたのは一日の内ほんのちょっとだけだった。

馬を持っていないのに押しかけて、練習させてくれと言うのだから……まあそれが妥当だと今では思う。
馬の手入れを覚える事が騎術最初の一歩なのも疑いようがない。

ただ、子供心には正規兵としての階段をとても登れているとは思えなかったので、馬小屋には通いつつ他のアテを探した。

そして見かったのが似たような年頃の、同じく上等な正規兵を目指して、稽古をつけてもらっている下級貴族……国によって自由農民、武家、土地持ちなどと呼ばれる、庶民より上、正規の貴族より下な家の事を総称してこう言う。その子供達のグループだった。

村の産業が強かったり、領主の国内での影響力が高かったりすると、庶民が彼らの稽古に混じるなんて事はあり得ない。

ただ、このエチフィルド、名前の通り平原の端っこの村にはオリーブ畑はあれど、搾油が出来る施設も無く、とりあえず苗字がついてる、くらいの立場だった。
そこで繋がった縁は、シマに流されるまで続いてきた。

一人を除いて。