Eno.434 エイリーク・N・A・ウエザラル

久方ぶりの。

 
さて・・・・東屋に運ばれ更に濡れないようにレインコートを着せられた
今もまだ眠り続ける・・・・エイリーク。

一先ず、青年に湯と真水を飲ませてもらったことで喉を潤す事が出来た。

心なしか体調も良くなった・・・・丁度その時に雨風が強くなる。
いよいよ本格的な荒天になって来たようだ。

「そのままじゃ多分くってくれないから・・・・ナイフで細かくして・・・・」

そんな荒天の中、青年は殆ど生焼けの肉をナイフで細かく切り分けている。

そう彼は・・・・エイリークが本能的に『生肉』しか受け付けない事を知って
いるのだ。
因みに火が通ってる部分は、ちゃんと青年が食している。

さて・・・・口の中に入れられる、ほゞ生の肉・・・・すると。

「・・・・!」

何時、振りだろうか・・・・久方ぶりの食事ましてや『生肉』である!
ソレは、もう無意識のまゝ生の肉と血の味を感知し飲み込んだ!!

こんな生肉を口に入れたのは・・・・彼にとっては、もう遠い昔・・・・
『赤色矮星』の内部で焼かれ続ける前・・・・もう『200兆年』よりも昔。

かつて・・・・辛うじて人格を保っていた時まで遡る。

「おっ・・・・!
 やっぱ行ける感じか!
 もう一個作るね・・・・」

再度、青年が全く焼けていない生肉の部分を口に入れてくれる。

「・・・・・・・・!」

すると再度、肉をすぐ飲み込む・・・・目も開けず、ずっと動けず寝ているように
見えるが・・・・そう見えるだけで『起きている状態』に限りなく近いのかも知れ
ない・・・・それだけ貪欲に肉を食べたのだ・・・・こんな状態でも生きようと
する気力があるのかも知れない。
 
「これだけあったら・・・・足りるかな・・・・」

「・・・・・・・・」

久方ぶりの生肉を食らい・・・・空腹も乾きも満たされたのか『寝息』を、たて
始めるエイリーク・・・・。

もしかしたら今まで本当は眠れていなかったのかも知れない。

そんな彼を見て安心したのか。

「・・・・・・・・また後で行けたら行くから・・・・」

と・・・・青年は拠点へと帰還したようだ。

ここに、ひとり残されるエイリーク・・・・こんな嵐の中でも穏やかな寝息を
たてながら眠り続けている。

本当に・・・・久方ぶりに穏やかな眠りについたエイリークなのであった。