雨は強くて
「この島に来てから、どれだけ経っただろう~……。」
日付を数えるなんてことしてこなかったし、数えてもすぐに忘れてしまう。
気軽に考えていた自分の認識を改める必要があるのかも。
……いや、ないのかも。
「うぅ~~。
めっちゃ風強いしぃ……音デカいしぃ……。」
「すぐさっきまで拠点の外に居たからさぁ、下手こいたらコレ巻き込まれてたよね。」
聴覚は良い。蝙蝠だから、些細な振動も過敏に感じられる。
だからこそ、この雨風は……"怖い"ものだと、強く、強く感じる。
逃げられる場所が限られているこんな小さな小さな島なら、なおさらなのだ。
「ティティちゃんとかリーザちゃんとかが作ってくれるリョーリは美味しいけど……
……ここの生き物の血はやっぱまじぃ。」
「はやく……おうち、かえりたいな。
……"お家"と呼べる場所なんて無いのだけれど。
自由を削がれるのは羽を捥がれるのと同義。
恐怖に抗えない幼き蝙蝠は、裾をひっぱるのであった。