Eno.112 【空繋ぐ機装魔導師】七曜

第四章【家出】

「みんなはいいよね。才能あって、長生き出来て……!」
 母さんがおばあちゃんと和解してから早数年
 確か16か17の時、そんな事を言って私は家を出た

 私の故郷には『魔術』と呼ばれる学問があった
 おばあちゃんも母さんもお姉ちゃんも立派な魔術師だった
 私も家族のような魔術師になりたくて、いっぱい勉強した

 けれど、家族の壁は高く、分厚くて
 少しだけ逃げたい。そう思うようになった

 出来るだけ遠くへ行こうとした
 みんなの行かない場所まで行こうとした

「……!?」
 気付いたら、私は知らない街にいた

 人が飛び交う大きな交差点、それを囲む大きな建物
 待ち合わせ場所になっている犬の銅像
 ここは故郷と違う世界だと感覚で分かった

 彷徨った先である組織に拾われた
 この世界にも術士のような物があるのかと思い
 帰る家も無かったから速攻で入った

 そこでの生活は楽しいものだった
 バイトをしたり、服を買ったり、魔法や魔術を駆使して戦ったり
 同じ学校にいた黒江って言う三つ編みの男の子と仲良くなったり

 色々な出来事があったけど、私のいていい場所ではないと思った

 だから、別れを告げる前に海を見ようと思った

 私の故郷の海は泳げたもんじゃない・・・・・・・・・から
 魔物のいない澄んだ海を一度でいいから見てみたかった

 この世界で買った携帯電話に海の写真を収めた
 母さんもきっと、気に入るだろうと思った

 でも気付いたら波に攫われて、謎生物のいる島で目が覚めた
 携帯電話は無くしてしまった

 色々な人がその島にいて、みんなのおかげでなんとか帰る事が出来た
 帰り道で調査をしているおじいさんから色々聞いてたけど……忘れた

 でも彼の話を聞いてより一層異世界への憧れが芽生えた事は覚えている

 そういえば、その時も確か便箋があって
 ちょうど今みたいに不安定な天気で……

 あれ?