Eno.562 ナナシ

11.流れ着いた希望

[シャクネツ]の次は嵐がやってきた。
あの街が仕事場の閉鎖解除をまつならず者で溢れかえっていたあの日によく似た光景、血気盛んなモノは警告など気にせずに飛び出してそのまま何人も帰ってこなくなった。
ここで、誰かを失うかもしれないと思ったけど、
でもここはあの街とは違う、自然に囲まれた小さな陣地だけの世界だから、今のところ大丈夫だと信じ。気が付くとこんな天候でも探し物に出かけて岩貝の直撃を食らった。
みんなの影響を受けちゃったね、マシな方らしいけど?
結果としてはあの時そのまま帰ってこなくなった人々に何が起きたかを実感することになるとはね。

ーそうだ、あの日々が相棒との出会いだったな。
誰かと共になにかを成し遂げようとしていた彼のことを少し思い出そうと思って、雨降りしきる森を少し散歩してきたんだ。視界は皆無に近く、ドローンの明かりが照らす僅かな範囲とみんなが歩き踏み固めた道を便りにね。

その後は、同じ轍は踏まないと誓い、外に出たくてしょうがない人々の様子を見ながら晴れを待つことにした。
その間に目隠れの青年が「悪魔」という種族であることが判明したり、複製体のようなモノが拠点に現れたりと目を疑う事態に直面した。気にも留めていなかったがみんな全く違う世界からここに流れ着いたんだ、一人ぐらい異形義体のモノがいてもおかしくない。

だったら、僕は医者兼研究者としての仕事をすることに専念しよう。

いつの間にか浜辺に船が流れついていたらしく飛び出していった仲間たちが持ち帰ってきた積み荷には、、大砲、船の設計図、財宝といった待ち焦がれたものが沢山あった。

全員が乗れる船を造る_
この小さな世界での大仕事はそれに決めた。