【9 その手を伸ばせ】
クライルから話を聞いた。
彼を囲む現状のこと。
クライルはファミリーを
消してしまいたいって言ってたけれど。
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「──クライル。
君は、どうしたいの?」
逃げても良いじゃないか。
我儘言っても、自由になっても。
だから僕は、問い掛けたんだ。
……クライルは、自分のいた
薄汚れた世界なんてどうでもいい、
そう言ってやりたいことを語ってた。
他の世界へ渡るのも良いかも知れないって。
名案が浮かんだ気がした。
リシアンサスに相談したら、
良いよって言って貰えた。
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「……僕とクライル。
一緒に、リシアンサスの、世界へ」
僕もクライルも詰んでた人生だ、
優しいかみさまのところで、生まれ変わろうよ。
クライルも僕を助けてくれたから、
お礼を、したかったんだ。
──その手を伸ばせ。
◇
嵐が来た。
嵐と共にクライルが拾った書き置きによると、
嵐の時には不思議な花が咲くのだという話。
花魔法のフロルの人間としては、勿論、気になる。
だから僕は嵐の中で、その花を探しに行ったんだ。
誰に命じられた訳でもなく、
それは僕が、僕の意思でやりたかったこと。
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「……あの、花、を」
傷だらけになって、辛うじて拾って帰った。
綺麗な綺麗なその花は、宝物。
ニライが先回りして、
同じ花を探していてくれていたらしい。
僕は自力で見つけられたけれど、
ニライのその気持ちが、ありがたかった。
『小さくても夢見たことの為にやったことが、
無駄な徒労に過ぎないってなったら悲しいだろ』
君の優しさを忘れない。
ありがとう、ニライ、太陽みたいなともだち。