Eno.715 シュリ

再見

嵐の最中、離れ小島に漂着船が姿を見せた。
天気の違いはいくらかあるものの、現象自体はあの時と同じだ。
つまり間もなく脱出に十分な大きさを持つ船が出来、
多少勝手は変わろうが脱出キットも揃うということだ。

元の世界への帰還は再び叶うだろう。
ただただ皆の働きのおかげで。

島に戻り来た時からずっと、
その後の事ばかりを考えている。
現下のすべてを己から切り離し、皆に預けて。
それが望ましいこととは思わないが、
他の方法を模索する時間も既になかった。

今この手にあるのは嵐の中に見出したもの。
かつて島に置き去ったはずの、わたしの弱さの証。