【10 閑話 フロルの街の罪と悪】
僕の育ったフロルの街では、
尊属殺が悪とされる。
僕はそこでお父様を殺したから、
死刑を命じられた。
フロルの魔法はその血脈に宿る。
フロルの血は兄様が継ぐから、
罪を犯した僕は殺される。
僕はそれでも守られていたから、
賭博とかくすり? とか
全然知らないんだけれどもね。
いつか知る日が来るのかな。
そんなの、知らなくても良いこと?
まぁ、それも、おいおい……。
◇
フロルの街の外は内戦状態だ。
大陸国家シエランディア。
大きな大陸ひとつがそのまま国。
でももうこの国は何百年も、
ふたつの派閥で争っているんだって。
旧くからの血筋を大切にする旧王派、
新たな王を掲げる新王派。
数年で玉座はすげ替わり、
どの王も長くいた試しがない。
シエランディアの玉座はとうに形骸化しているから、
民はそれぞれの街で自治を始めた。
いつか、この穏やかなフロルの街も
内戦に巻き込まれる日が来るのでしょうか。
まぁ、もう帰らぬ場所だ、
考えてみたところで仕方ない。
国にいるシオンのことは気になる。
過去の愛と割り切れたら良いのに、
僕はまだ君のことも、
殺したお父様のことも忘れられないんだ。
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「……おとうさ、ま」
リシアンサスが、僕にこれから愛をくれるのは知ってる。
それを僕は、とても嬉しく思ってる。
でもね、お父様もシオンも消えてくれない。
全然、過去になってくれないんだ。
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「…………愛して、よ」
あなたにこそ、僕は。