Eno.112 【空繋ぐ機装魔導師】七曜

第五章【旅立ち】

「ほんとに家を出るの?」
「もちろん。母さんは心配性だなぁ」
 呆れるように呟いて、さっさと家を出ていく

「マスターとお幸せにね」

 そんな言葉を残して

 それから、異世界へ行く方法が少しわかるようになった
 やがて自らの意志で異なる場所へ行く事も容易になって行った
 様々な国や世界を旅し、様々な術を書き記した

 その時から自身が死ぬ夢を見る事が増えた

 最初に見たのは、迷子になってそのまま朽ちる夢

 ある時は誰かに弄ばれて棄てられる夢
 ある時は魔物に潰される夢
 ある時は…………

 ……これ以上は思い出したくない

 その時の感触は妙に生々しくて
 視界が溶ける感覚も、血の引く感触も、今も思い出してしまいそうで

 時々生きてるのか不安になって
 生きていると言う事を認識しては微笑んでる

 私だけが大人になって、みんなを追い越してしまう
 そんな事を考えてはまた不安で堪らなくなる

「……」

 たまには。と帰ってみた
 久々に会ったお姉ちゃんは今まで以上に優しかった

「大丈夫。しぃちゃんにはお姉ちゃんがいるよ」

 にこ。と優しく微笑んで、私を抱きしめた

「もし困った時、秘密にしたい時も私にだけは教えてほしいな
 私はお姉ちゃんだから、解決策を知ってるかもしれないし……」
「……わかった」

 お姉ちゃんはとても心強く見えた
 実際すごく心強かった

 最近見るようになった夢の話をすると
 お姉ちゃんは納得したように微笑んだ

「しぃちゃんは慎重だから
 よくない出来事のシミュレーションを夢でしてるのかもしれないね」

「今の魔術をもっと強くしたら
 少しは夢を見る頻度も減るのかなぁ」

 ぽんと頭を撫でられ、私は魔術の特訓をする事にした

 その後、負傷した姉の意識を別の器に移して
 闘技世界で戦うのは別の話……