Eno.66 浅岡百合子

リリィ-プロローグ

数ある分割世界の一つ、《響奏の世界》で生きていた少女(当時)
《否定の世界》で発動した能力により侵略を受け、対抗するために二つの世界を混ぜたような異空間で戦っていた。
しかし結果は敗北、侵略は成功。
二つの世界の住人は入れ替わってしまった。

《否定の世界》は世界間移動ができない上に不毛の地。
幸か不幸か、魔法と呼べるほどではないが特殊な能力――異能を持つ《響奏の世界》の民は
それぞれの異能や持ち前の知識や力を合わせて生き抜いてきた。
どの世界でも極刑であった《否定の世界》へ追放してきた罪人が《響奏の世界》経由でまた世に放たれた
そのことに気付いた他の分割世界が行動を起こすか、自分たちの力で《否定の世界》を脱出できる日を願いながら。

"その日"は来た。
ほんの僅か、小さな穴が開いた  ……らしい
真偽の確認と本当なら"穴"の位置を知るために彼女はようやく安定してきた住処を離れた。
移動の途中、従えた原生生物を使って海を渡っていた際に大きな波に飲まれ――
――気が付けば、いつぶりかの晴天の下にいた。


「なにこれ」