Eno.16 ミオソティス

【11 閑話 飾られるだけの人形は】


 僕は、ふわふわ、ふりふりの服が嫌いだ。
 女の子らしい格好や、女の子らしい言葉が嫌いだ。
 他の子を見ているのは構わないけれど、
 僕がそのようになるのが嫌いだ。

「……王子様のような服を纏い、
王子様のような言葉で話し、
王子様のように武術を覚え」



 なりたかったのは。

「……僕は、フロルの家の
お人形さんじゃない」



 花魔法の力を持たぬ僕は、
 好きでもない誰かと強引に結婚させられる定め。
 そんなの嫌でたまらなかった。
 女の子らしさはお人形さんの象徴だ。

 そんな僕は、捨てないと。
 僕が僕である為に、選んだ格好と言葉と行動。
 かわいいお姫様じゃなくて、
 凛とした王子様のようになりたかった。

 でも、まぁ。

「……リシアンサスやクライルが望むなら、
たまには服装、変えてもいいけどね」



 昔は嫌いだった女の子の格好。
 これから皆と過ごすうちに、
 好きになれる日も来るのでしょうか。