Eno.382 レグルス

無題

島が沈むんだってさ。

ちゃんと便箋読んでねぇから驚いたよ。
手紙とか、何とか。

──だめだな、故郷の悪い癖が出てる。
捨てちまうんだよな、そういうもの。

香水の匂い、柔い肌の感触。
聞き飽きた甘言、媚びる嬌声。


気色悪くて敵わない。

まだまだ向こうに帰らなくて済むと思っていたんだが、
どうやらそうはいかないらしい。

「あーあ、帰ンならまた他所の世界で頼まァ」



あ、ところでこれって、他所様に見られたりすんのかな。
おっと、それならいけねぇな。

──ここまで読んだ君が。
読んで且つ靡くような馬鹿女じゃねぇ事を祈るよ。

馬鹿な女も好きだけど。